scispace - formally typeset
Search or ask a question

Showing papers in "Japanese Sociological Review in 2008"


Journal ArticleDOI
TL;DR: It is revealed that A. Hochschild’s daughter-in-law had a miscarriage in 1983.
Abstract: 日本ではA. Hochschild(1983)の成果を基にして,感情労働の遂行が燃え尽きに帰結するという主張が頻繁に見られる.しかし,多数の経験的検証が行われている欧米では,感情労働と燃え尽きとの連関のありようは主張されるほど明確ではないと批判されており,日本で見られる経験的検証なき因果連関の主張は危ういものと言わざるをえない.そこで本研究は,感情労働と燃え尽きとの連関について,文献精査をし,その結果を踏まえ事例データの分析を通じて経験的に検証することを目的とした.主な結果は,まず,感情労働することで燃え尽きる,という因果連関に強い疑義が呈された.Hochschild(1983)の丁寧な再読と燃え尽き事例の分析からは,感情労働したいのにできない状況が,燃え尽きの現象に共通した背景として見えてきたのである.また詳細を見ると,感情労働したいのにできずに燃え尽きに至る過程は多様であった.これは,職業特性の多様さ,感情労働の遂行の多様さ,感情労働過程の多様さを看過して,さまざまな職業を「感情労働職」として1つのカテゴリーにまとめて燃え尽きと関係づけて問題化しようとする粗雑な議論に反省を促すものである.さらに,感情労働の心理的効果もそうした諸要素に依存するのであって,燃え尽きは感情労働の本質的な問題ではないことが経験的に示唆された.

45 citations



Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors describe a scenario in which a group of individuals are attempting to find a suitable location for a meeting with a representative from the government.However, they cannot find any suitable location.
Abstract: 本稿では「日本人」がどのように世界の国々を見ているのかを実証的に明らかにするために,20ヵ国に対する国別好感度のサーベイデータを用い,認知構造の多元的側面やその世代差を統計的に検討した.分析の結果,まず好感度の平均値の序列としては日本を含む西欧諸国への好感度のほうがその他の国々のそれに比べて高いことが示され,先行研究でたびたび指摘される「西高東低」型の存在が確認された.さらに20~34歳,35~49歳,50~64歳,65歳以上で年齢層別に好感度の平均値を比較した.特にロシアについて49歳未満に比べると50歳以上ではその好感度が特に低いことが示され,個別の国に対する好感度には世代差が存在することが明らかになった.さらに好感度を一元的序列ではなく多元的な構造として把握するために,個人差多次元尺度構成法を用いた分析を行った.その結果,第1次元として「(日本を含む)欧米先進諸国か否か」という「西高東低」型と重なる次元が抽出され,同時に第2次元として「(否定的)イメージのメディア報道」と解釈できる次元が抽出された.また65歳以上では第1次元を特に重視するのに対し,それ以下の世代では第2次元も好感度の決定に大きな影響を与えていることが明らかとなり,「西高東低」型で安定しているとされてきた日本人の外国好感度の変容可能性が示された.

4 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: “Group threat theory”の効果はなくなり!それにかわって「ブルーダミー」,あるいは「個人収入」といった変数の影響がみられるようになった.これ
Abstract: 本稿では,外国人住民が集住する地方工業都市において,日本人住民が外国人住民に対して抱いている否定的意識のあり方とその規定要因を,1999年と2005年の2回にわたって実施した地域住民調査を通じて明らかにする.まず,外国人に対する「排他的意識」の規定要因を分析したところ,1999年の段階では,回答者の居住地域における「外国人比率」が影響を与えていたのに対し,2005年段階では,「外国人比率」の効果はなくなり,それにかわって「ブルーダミー」,あるいは「個人収入」といった変数の影響がみられるようになった.これは,“Group threat theory”と呼ばれる理論を支持するものである.次に,日本人住民によって認識された「生活悪化意識」の規定要因を分析してみたところ,「教育年数」を除いて,有意な効果をもつ変数は確認できなかった.これは,幅広い住民の間で「生活悪化意識」が共有されているということを示唆している.本論文の意義としては,まず第1に,日本の地方工業都市においても“Group threat theory”を支持する知見が得られたこと,そして第2に,「生活悪化意識」と「排他的意識」とではその規定要因が異なっており,「生活悪化」という問題の「認識」と「排他的意識」の「表明」には異なるメカニズムが働いていることが示唆されたという2点を挙げることができる.

3 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors discuss the effect of gender stereotypes on women's health and gender stereotypes in the context of health care, and propose a strategy to improve women's well-being.
Abstract: 本稿は,いかなる社会的属性を持つ人びとが犯罪被害のリスクを感じており,それはなぜなのか,について明らかにする.1960年代から欧米ではじまる犯罪不安の実証研究は,女性,高齢者,低階層の人びとが犯罪被害のリスクを感じやすいことを明らかにしてきた.そしてそれらの研究は,そのような属性を持つ人びとが身体的・社会的に脆弱であるために犯罪被害のリスクを感じやすいという解釈を提示する.本稿では2000年のGSSとJGSSのデータを用いて,犯罪リスク知覚の形成要因の日米比較分析を行い,欧米で示されてきた規定構造は日本においても確認できるのか,そして日本の規定構造は欧米のように身体的・社会的脆弱性によって解釈できるのかを問う.分析の結果,次のことが明らかになった.アメリカでは女性,高齢者,低収入の人びとが犯罪被害のリスクを感じやすく,その規定構造は身体的・社会的脆弱性によって解釈できる.一方,日本では若い女性,男性で幼い子どもを持つ人びと,女性のホワイトカラーおよび高学歴層で犯罪被害のリスクを感じやすく,その規定構造は身体的・社会的脆弱性によって解釈ができない.最後にこのような日本の規定構造について,性的犯罪への不安,重要な他者の脆弱性,GSSとJGSSのワーディングの違い,夜の1人歩きの機会,メディアの役割といった観点から複数の解釈を提示する.

3 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors describe a scenario in which a group of individuals are attempting to find a suitable solution to a problem: "a.k.a., the problem of finding a solution".
Abstract: 今日の「格差社会論」の隆盛は,これまでの階級・社会階層研究には深刻な問題があったことを明らかにした.階級・社会階層研究は,拡大する経済格差と「格差の固定化」など,社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず,社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある.このことは同時に,社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという,階級・社会階層研究の固有の使命を十分に果たしえていないということも意味する.こうした階級・社会階層研究の困難をもたらしたのは,その戦後日本における独特の展開過程だった.戦後日本の階級研究は大橋隆憲によって確立され,その階級図式は社会学者を含む多くの研究者に受け入れられたが,それはMarxの2階級図式を自明の前提とし,しかも労働者階級を社会主義革命の担い手とみなす政治主義的なものであり,1980年代には有効性を失った.社会階層研究を確立した尾高邦雄も,同様に階級を政治的な存在とみなしたが,大橋とは逆に現代日本には明確な階級が存在しないと考え,連続的な序列,あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーとしての社会階層の研究を推進した.こうして日本では,他の多くの国とは異なり,階級と社会階層がまったく別の概念とみなされるようになり,その有効性と現実性は大きく制約されてしまった.階級・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには,(1)Marxの2階級図式を明確に否定して,資本家階級,新中間階級,労働者階級,旧中間階級の4階級図式,あるいはそのバリエーションを採用するとともに,(2)社会階層を,階級所属が産業構造,労働市場,家族,国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして定義することが有効である.このとき階級と社会階層の不毛な対立は克服され,両者を相互補完的に活用することにより,現代社会の構造を分析する生産的な研究分野としての「階級-社会階層研究」を構想することができよう.

3 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effect of gender stereotypes on women's health and gender equality. But they do not discuss the relationship between gender stereotypes and women's sexual health.
Abstract: 都市空間は,社会過程の所産である一方で社会関係の在り方を規定する条件ともなりうる.本論文は,ある地域社会における都市空間の刷新と存続をめぐる意見対立を切り口に,社会層と政治的表象の空間の関係を読み解いてゆく.対象事例は,福山市・鞆の浦「鞆港保存問題」である.鞆の浦では長い歴史において施政者による港湾整備事業が港湾機能と政治的地位の変動をもたらしてきた.そして現在,鞆港を埋め立てて架橋する公共事業が計画され,その賛否が地域を2分している.本稿は建設派/保存派の各住民が複数の社会層で構成されている点に注目し,社会層と政治的地位,居住区,空間的記憶の相関関係を分析した.その結果,(1)建設派は,自らの政治的地位を示す都市空間の実現のために道路計画を支持する地域指導者層と地域共同体の中核的空間が鞆港ではない社会層が中心となること,(2)保存派は,鞆港の空間的記憶の再評価を目指した次世代の地域指導者層,港町としての社会的連帯の空間的基盤を保護しようとした女性・主婦層,鞆港が支えてきた伝統的な政治的地位の維持を志向する旧名望家層によって構成されていること,(3)地域住民は鞆港を政治的地位を表象する空間として捉え,その刷新/存続がもたらす政治的地位の変動が対立点であることを明らかにした.都市空間は空間的記憶を介して現在に生きる人々の実践とその社会的世界を規定しているのである.

3 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors describe a scenario in which a group of students at the University of Tokyo have to deal with the problem of "disorderliness" and "misbehavior".
Abstract: 社会学を専攻する学部学生は,大学で社会学教育を受けるなかで,社会学になにを見出しているのだろうか.彼らは社会学をどのようにおもしろいと思い,卒業後どのように役に立つと思っているのか.本稿は,2003年に日本社会学会社会学教育委員会が7つの大学を対象として行った質問紙調査の結果からこのことを検討する.前半で,大学入学以前の社会への関心や社会学についての知識,社会学の授業についての満足度などを見たあと,後半では,学生たちがいかなる語彙で社会学が「役に立つ」と語り,社会学が「おもしろい」と語るかを,自由回答を分類することで明らかにする.そこからは,進路に役に立つことや社会への知識が得られることよりも,視野を拡大する「幅広さ」,常識を転倒する「意外さ」,自分と関係する「身近さ」に社会学の魅力を感じている学生の姿が浮かび上がる.この調査結果への評価を通して,本稿は社会学教育が現在直面する「岐路」を暫定的に描き出すことを試みる.

2 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: It is confirmed that £1.2bn will be spent on renovating Wembley Stadium in 2018.
Abstract: 本稿は,ナショナリズム研究において提起されている構築主義的アプローチの批判的検討を通じ,その射程を描き出すことをめざすものである.近年,ナショナリズム研究において,従来の近代主義と歴史主義の相克を乗り越える為に,構築主義的アプローチが提起されている.これは,国民国家批判に代表されるような政治的構築主義としてではなく,方法論的構築主義の立場から再検討される必要がある.この企図のため,本稿はベネディクト・アンダーソンのナショナリズム論を再構成していく.アンダーソンは,「想像の共同体」という語に示されるように,ナショナリズムに対する構築主義的説明を行っている.だが,他方で彼は,「なぜ人はネーションのために死ぬのか」という問題をナショナリズムの中心的な問いに位置づける.すなわち,構築をめぐる知の問題系と,構築主義に突きつけられる死の問題系が,アンダーソンの議論には共存している.この理論的意義を検討することを通じ,以下の3点を示す.第1に,アンダーソンの議論は,その主張以上に,観察可能な言説を対象とする点で方法論的構築主義に位置している.第2に,ナショナリズムは,構築の外部を排除しつつも内部へと包含するような構造を有している.そして,第3に,ナショナリズムにおける構築主義の理論的賭け金は,構築の外部を補足することの失敗自体を記述していくことにある.

1 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors describe a scenario where a person is confronted with a situation where he or she has to decide whether or not to respond to a message from another person.
Abstract: 本稿の課題は,M. フーコーが最晩年に取り組んだ古典古代思想研究におけるキー概念,「自己への配慮」が,〈倫理‐政治的〉な自律主体の形成という観点から構成されていることを明らかにすることにある.彼のこの取り組みについての従来の議論では,「自己の自己との関係」という形式をとる「自己への配慮」の「主体」が,閉じられた自己関係の枠内にとどまる「倫理的」主体として捉えられ,この主体との関わりで,彼の権力論において常に問われ続けてきた「抵抗」拠点の可能性について指摘されてきた.そこで本稿では,この議論を一歩進めて,「自己への配慮」と「抵抗」拠点との関係を単に指摘するだけにとどめず,両者の論理関係を捉えたうえで,この「自己への配慮」が常に「他者」との開かれた関係の中で機能する,〈倫理‐政治的〉な観点から貫かれた概念であることを検討する.この課題を遂行するために,まずはじめに,「自己への配慮」と「抵抗」拠点との論理関係を考察し,前者が「主体の変形」(「スピリチュアリテ」)の実践として定義されていることを明らかにする.次に,この「自己への配慮」が,2つの位相を持つ「他者」と常に関係を持ちつつ実践されることを明らかにする.そして最後に,この「自己への配慮」によってはじめて,下位の者が上位の者に対して生命を賭けて実践する「パレーシア」(「真理を語ること」)が可能になることを指摘する.

1 citations


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effect of the environment on the performance of a group of students in the field of computer science, and propose a method to mitigate the effects of environmental degradation.
Abstract: 私が勤務する大学では,平成に入り間もなく社会学教育は岐路に立ち変容をせまられていた.以来約15年以上にわたり,私は福祉士教育と社会学との接点で悪戦苦闘することになった.批判的になることによって発見できることはたくさんある.社会学に限らず,少なくとも学問は基本的にそのような特性を持っていよう.しかし,批判的になることによって見えなくなることがあることを,私は自分が実習生として社会福祉現場実習に行って知ることとなった.社会福祉援助技術現場実習の実習生として,あるいは卒業後に職員として,福祉施設の職員や利用者や実習生の逸脱行為に出会ったとき,その逸脱行為をどのように理解しようとするか.その行為者のパーソナリティの欠陥にその原因を探そうとするのか,同様の「状況」におかれれば自分も含めた誰にでも起こりうる行為かもしれないとその行為を理解しようとするのか.社会学は,社会福祉士教育にたいして後者の視点を提供できる.それは社会福祉士教育にたいする社会学教育の貢献点のひとつである.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors discuss the effect of different types of transformations on the quality of the environment and propose a method to improve the quality and sustainability of outdoor environments.https://www.goprocessor.org.
Abstract: 本稿は,1918年創刊の雑誌『赤い鳥』に所収された童謡を対象として,メディア論の視座から考察し,近代日本における「声」の文化の一端を描き出すものである.童謡は,初期の『赤い鳥』において音楽としてではなく,詩として創作されていた.童謡が文字で表現されながら歌謡として成立しえたのは,それが読者によって声に出して読まれ,自由な節を付けられていたためであった.童謡を歌うという営みは,伝統的な社会において歌われ伝承されていたわらべうたを,詩という複製技術を手段にすることによって復興させようとする北原白秋らの論理に支えられていた.童謡からみてとれるのは,近代において声の文化なるものを想像するときに逃れることのできない文字の位相である.声と文字は,それぞれ自律したシステムとして存在するのではなく,むしろ一方の内に他方が潜み,相互に重なり合うような関係にある.声と文字とは技術的な媒介や当該社会における実践や想像力など,多様な要因によってさまざまに分節される.とりわけ印刷技術は,近代社会において声の文化の形成の重要な一要素となる.本稿は童謡の検討を通じて,文字や声の文化の関係を一義的に決定する要因としてメディアを捉えるのではなく,声や文字を新たに関係付ける再編の契機として,さらに多様な文化を生み出す生成の契機としてメディアを捉え直す.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors propose a method to solve the problem of "missing links" in the context of data collection, and demonstrate the effectiveness of their method. But they do not specify the method.
Abstract: フォーディズムからポスト・フォーディズムへの移行過程において,私的な商品消費は福祉国家の社会政策にもフレキシビリティを要求した.サッチャリズムは,規制緩和とプライヴァタイゼーションによって,このフレキシビリティ要求に応えようとするものであった.興味深いのは,サッチャリズムの支持者だけでなくその批判者もまた,商品消費がアイデンティティ編成にもつ意義を積極的に評価していたということである.しかしながら,アイデンティティがなによりも商品消費との関連で定義される消費社会では,社会政策の対象であった貧困層は周縁化されてしまうことになる.Z. バウマンによれば,消費社会の貧困層は消費選択の自由をもたないだけでない.労働者でも消費者でもなくなった貧困層は犯罪化されている.「マイナス記号のついた自画像」として,かれらは消費社会の自己イメージを保つ役目を果たす.貧困層の犯罪化は,かれらを福祉国家の規範の外部におき,経済的にだけでなく倫理的にも貧困を正当化することになる.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effects of different types of foods on the environment and the effect of different kinds of ingredients on the quality of the environment, such as water, air quality, etc.
Abstract: 近年,摂食障害の当事者は,インターネット上で自らの経験や考えを語りはじめた.そんななか,一部の当事者たちの間で,摂食障害はダイエットが原因であり規則正しく一定量の食事をとることで回復するという解釈が,回復への道のりのひとつとして注目されている.このような「食事」への注目は,摂食障害が「個人」「家族」「社会」のいずれかの地平で論じられがちな風潮のなか,一部の回復者たちの間で生じている新しい動向と考えられた.そこで,本稿では,こうした動向に着目することで,摂食障害者が置かれている状況や回復者の実践の一端を明らかにすることを試みた.本稿ではAさんとBさんの回復体験記を取り上げ,彼女たちが,摂食障害を他の解釈ではなく「食事」の問題として説明する論理はいかなるものなのか,このような解釈を提示することで何を達成しようとしているのかを検討し,以下の知見を得た.体験記では,原因の探求と解決方法は別だという視点から,「個人」「家族」「社会」といった解釈は具体的な解決方法を提示していないと指摘されていた.次に,食べれば治る「食事」の問題と説明する体験記は,過食や嘔吐を解決する手段を当事者自身に取り戻そうという試み,すなわち,「解決権の回復」が試みられている事例であることがわかった.「食事」への注目の背後に,摂食障害者を取り巻く言説環境に対する,回復者による批判的な眼差しをみてとることができた.

Journal ArticleDOI
TL;DR: Theater-goers are urged to consider their options before committing to a date or time limit.
Abstract: 本稿の目的は,「性同一性障害の正当な当事者であること」をめぐる当事者の語りを検討し,そこでいかなる基準が用いられているかを示すことである.まずは,サックスによる成員カテゴリーの自己執行/他者執行の区別を参照しながら,性同一性障害カテゴリーがどのように用いられているのかを見ていく.次に,「正当な性同一性障害」について当事者が語っているインタビュー・データを分析し,そこで用いられている基準を析出する.その結果,「医療への依存度」「自己犠牲の程度」「女/男らしくあることへの努力」「社会性の有無」という複数の基準が用いられていることがわかった.これらの基準はもともと医学において用いられている基準を参照したものであったものだが,現在ではそれが独り歩きし,性同一性障害コミュニティ独自の基準となっている.以上の議論によって明らかになったのは,性同一性障害カテゴリーが,それを執行する権利が医学にのみあるのではないものとして,コミュニティのなかに存在しているということである.また,そのカテゴリーを適用されるための基準が,医学の求める基準をさらに厳格化し,社会にいかに適応的であるかによるものとなっている,ということである.性同一性障害カテゴリーは,医学から離れた当事者間の相互行為においても,当事者自身によって,非常に道徳的なものとして管理されているのである.

Journal ArticleDOI
Abstract: 1. 産業主義ないし産業社会という語は,サン-シモンが彼の思想のキイ・ワードとして作り出したもので,フランス革命(イギリス産業革命がこれに先行していた)後に建設されるべき,産業に基礎をおいた新しい社会体制を意味した.コントはサン-シモンからの影響により,産業主義の主唱者の一人になったが,産業主義の語よりも実証主義の語を中心に用いることによって,サン-シモンから独立した.スペンサーは軍事型社会から産業型社会へという進化テーゼを提出したことによって,産業型社会という語の中心的な推進者となった.2. 第二世代のデュルケームは,サン-シモンの産業主義とコントの実証主義を統合することを考えた.産業主義はその近代科学の発展を,分業の社会的機能を取り込むことによって,社会の組織化に向けるものでなければならない,というのがデュルケームの主張であった.同じく第二世代のジンメルは,産業社会を,貨幣を媒介とする経済的交換の社会として考えることにより,「産業」という観点から「経済」という観点へと切り替えた.同世代のヴェーバーは,視点を「経済と社会」へと拡大し,貨幣経済を実物経済と対比して,産業社会における貨幣の重要性を浮上させた.3. 日本は戦前,西洋の先進諸国に追いつくために,近代社会を産業型社会としてではなく,軍事型社会として形成したが,戦後は軍事型社会から訣別し,1955年に始まる高度経済成長によって,産業型社会になった.75年,日本は77%が「中流」帰属を表明する社会となったが,80年代以後,市場原理主義と規制緩和の政策を採用し,高度経済成長が築いた「平等化と福祉」の社会をみずから壊して,「産業主義の悪化」を生み出した.これを再び「よい社会」に向け変えるためには,「社会政策」を展開することによって,産業主義の悪化を克服することが課題である.

Journal ArticleDOI
TL;DR: For example, this paper reported that 208.5% of the users' responses were negative, while the remaining 25% were positive, indicating that the negative responses were due to "unknown factors".
Abstract: 日本に在住する外国人は戦後一貫して増加を続け,2006年末時点で208.5万人と日本の総人口の1.63%を占めている.こうした現象は多くの社会学者の関心を引きつけてきた.しかし一方で,エスニック・コミュニティ形成の要因について統計的データを用いて地域横断的に分析した研究は少ない.本稿はこのような問題意識に応えるべく,エスニック・ネットワークが外国人の居住地選択に与える影響を,全市区町村を標本とした重回帰モデルを使って主要国籍別に検証することを目的とする.その結果,エスニック・ネットワークは同胞人口の増加に対して正の影響を及ぼすことが確認され,これまで在日外国人研究によって明らかにされてきたことが地域横断的にみても妥当であることが示された.一方,エスニック・ネットワークは在留資格制度による制約条件のもと,国籍や性別ごとの受入態様に合わせて機能するものであり,エスニック・ネットワークは外国人の定住化へ向けた一般的経路ではなく,選択的に動員される資源であることが示された.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors discuss the effects of gender stereotypes on gender stereotypes in the context of gender diversity in the media and show that gender stereotypes can affect the perception of gender equality.
Abstract: 近代市民社会は,それが形成された歴史過程から,その内部に未熟な部分をかかえこみ,解放と抑圧のアンビヴァレントな性質をおびつつ今日まで成り立ってきた.その成熟過程で生じた反近代的,脱近代的,超近代的,没近代的,前近代的など,さまざまな思想上の言説は「ポストモダン」と概括されうる1つの思想傾向として現代社会の考察にさまざまな影響を与えてきた.(全体)社会を1つのシステムとして時代診断をする,マクロ社会学の立場からは,その思想像と歴史的に実在する近代社会像とを問うことが必要である.T.パーソンズは,ヨーロッパとアメリカの近代化が産業革命と民主革命,教育革命とアソシエーションを具現したと見た.富永健一は,日本社会の近代化を論じ,「近代産業社会」のモデルを一般化した.新睦人は,前期モダンと後期モダンとを区別し,情報化,経営化,国際化,大衆化の流れに変容したととく.金子勇と長谷川公一はマクロ社会学の視点から現代の9つの流れを追究した.特殊に現代的なもっとも社会学的なテーマは,厚東洋輔が「ハイブリッドモダン」として強調する「グローバリゼーション」の現実である.さらには,モダンの1つの位相でありながら後期モダンをも超えるような〈ポストモダニゼーション〉的な兆候が見えつつある.N.ルーマンのリスク化と環境,A.ギデンズのハイモダニティと監視化,Z.バウマンの流体化の論議は,そうした兆候を説いている.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors propose a method to find the best solution to the problem of "missing data" in order to improve the quality of data collected by the data collection system.
Abstract: 本研究は制度変革期(科学技術系国立試験研究機関の独立行政法人化)の事例から,変革後の適応期の専門職に起こる現象について分析を行ったものである.これまでの専門職論では専門職は職業に対する志向が強く,所属組織に依存しないコスモポリタン(職業人志向)であると考えられてきた.ところが制度変革期の動的組織にあっては,彼らにまったく異なる傾向が見られた.インタビューでは,合理化方針による雇用調整への不安をもつ非正規雇用の事務職だけでなく,研究職からも不安や不満が語られた.さらに変革に対する不安をアンケートデータを用いて,職種・従業上の地位の比較を行ったところ,正規雇用の研究職・管理職の方が,非正規雇用の事務職より不安が大きいことが示された.本稿では,この現象を〈相対的剥奪感〉〈ミッションの変化による葛藤〉〈研究者コミュニティの解体〉という観点から分析した.その結果,組織で優位にあった人々の自立性は,そのルールを成立させている社会に依存し,その社会のルールが変化する時,彼らの自立性は阻害され,不安を募らせたことが示された.そして彼らは,個々で自立的に専門分野へコミットしているがゆえに,集団の結束を強化することが難しく,組織の管理パワーの上昇に抗しにくかった.本稿は静的組織で自立的と考えられてきた専門職に起こったこの現象を,制度変革による動的状態でのアノミーであると結論づけている.


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors propose a method to improve the quality of the data collected by the data collection system of the university, which is based on the data gathered from the university itself.
Abstract: 政府の新自由主義的な大学政策のために,今日の日本の大学は深刻な危機に直面しつつあり,学生の質の変化が進む中,よりいっそうの大学教育改善の努力が求められる.社会学教育は,大学進学率の上昇にともなって拡大し,1991年の大学設置基準大綱化以降,各大学で学部・学科の再編が進んだ.『学校基本調査報告書』でみる限り,「社会学関係」の学生数・占有率ともに上昇しているが,その結果,社会学中心学科が拡大しているとはいいきれない.大綱化以降,学科名称は急増し,「大学改革」の迷走ぶりを象徴しつつ,『学校基本調査報告書』の学科分類は破綻してしまった.本稿は,社会学をプロフェッションとしてとらえることの意義,社会学プロフェッションが大学ルートと学会ルートの重なりと区別という形で存在することを主張し,一般国民や政府・財界との関係や社会学分野の課題を示し,大学ルートの集約の場,大学ルートと学会ルートの調整の場がないことを指摘している.本稿はまた,学生と教員の間,教員と同僚の間,教育役割と研究役割の間の「3つのアパルトヘイト」論を紹介し,教育と研究は構造と作動原理がかなり異なる点に教育改革が困難である理由を見,社会学教育の改革のためには「アパルトヘイトの打破」「理念・目的・目標の明確化」「社会学の社会的機能への目配り」を通じて実質合理性を高めることが重要であると指摘している.


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors described the following: "McAdamらの枠組み(治的機会構造,動員
Abstract: 本稿の目的は,滋賀県旧志賀町における県の南部広域処理システム施設の建設計画の反対運動を事例として,環境リスクを争点とする住民運動の成立条件を明らかにすることである.本稿では,McAdamらの枠組み(政治的機会構造,動員構造,フレーミング)や,Broadbentが,日本の運動を特徴づけるものとして,地域社会における社会的な制度や集合的な文化の脈絡に着目したという見解に基づいて,成功事例である巻町の事例研究も参照し,環境リスクを争点とする住民運動の成立条件について検証した.志賀町の事例では,その運動の大勢は,地域住民全体で,広域処理施設がもたらす環境リスクの問題を討議していくことよりも,上に力を向けるために,反対派の候補者を県や町の議会に送り込むことに力点を置いていた.その結果,反対運動は,定数1の県議や町長など地域代表を出し政策決定過程に参入した.しかし,広域処理施設をめぐる対立は,環境リスクが争点とならず,既存の保革対立が前面に出てきたのである.結局,県の広域処理施設の建設計画は進展した.本稿の検証では,環境リスクを争点とする住民運動が成立するためには,「環境リスクの問題への対応」において,運動が,McAdamの3つの次元を通して政策決定過程に参入していく過程で,「既存の地域社会形成のありかた」と融合させながら進めていくことが重要であると指摘している.


Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effects of using the Internet in the context of disaster response in disaster management. But they do not discuss the impact of the Internet on disaster response.
Abstract: 私は1990年代から社会学のテキストとウェブの制作に携わってきた.その経験に基づいて,2つの問題について論じたい.第1に,社会学テキストにおいてディシプリンとしての社会学をどのように提示するべきか.第2に,社会学ウェブのどこまでが社会学教育なのか.そして,それぞれの問題点は何か.テキスト制作上のジレンマや英語圏で盛んなテキストサポートウェブなどを手がかりに考えると,意外に理念的問題が重要であることに気づく.社会学教育には2つの局面があり,それに対応して,2つの社会学教育的情報環境が存在する.社会学ディシプリン的知識空間と社会学的公共圏である.テキストとウェブという社会学教育メディアも,この2つの局面に対応させて展開しなければならないのではないか.そう考えると,現在の日本社会学において「社会学を伝えるメディア」の現実的課題も見えてくる.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this paper, the authors describe a scenario in which a group of scientists are trying to find the best solution to solve a problem: "戦略なき大衆化" problem.
Abstract: 1990年代いらいの急激な量的拡大にともなって,日本における大学院教育は,大幅な質的変容を余儀なくされてきた.「戦略なき大衆化」とも形容できるその動向にともなって頻繁に取り上げられてきたのは,米国における大学院教育のプログラムとカリキュラムであった.しかしながら,その「アメリカン・モデル」の導入は,多くの場合きわめて不正確な情報と安易な発想にもとづいており,それがひいては,現在日本の高等教育システム全般を空中分解の危機にさらしているとさえ言える.本稿では,最初に大学院教育の量的拡大の実態とそれをめぐる比較的よく知られた事実と問題点について改めて確認する.ついで,著者がかつて共同研究者とともにおこなった社会学の分野における大学院教育に関する日米比較研究から得られた知見にもとづいて,大学院における教育プログラムとカリキュラムを改革していく際にアメリカン・モデルを安直に適用することによってもたらされるさまざまな問題について検討していく.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effect of different types of disasters on the environment and the role of the environment in these events.http://www.latimes.com/blogs/latimes/blogs.
Abstract: 日本では1970年代前半に公害反対運動を大きな契機として,公害・環境問題に対処する諸制度が形成された.これらが制定され30年を経た今日,その運用過程においてどのような問題が生じているのかを明らかにする必要がある.そこで本稿では,新幹線公害対策制度とそれをめぐる紛争事例を取りあげ,第1に,制度が硬直的に運用されることでどのような問題が生じているのか,第2に,なぜ硬直的運用が生じてしまうのかについて検討した.その結果,この制度が,技術的対策が可能かどうかに関する情報を重視する一方で,受苦が発生しているかどうかに関する情報を相対的に軽視して作られており,またその制度が硬直的に運用されることで,受苦の実態が看過され,地域からの制度の見直し要求が看過されている実態が明らかになった.こうした制度の硬直的運用は,直接的には,沿線に生じる受苦の把握が軽視され,本来手段にすぎない環境基準値の達成が目的化されることにより生じていることが確認された.さらにそれを恒常的に生じさせる構造的要因として,制度の運用の中心的な担い手である行政と専門家とが相互に正統性を付与しあう構造的関係が見出された.本稿ではこれを〈正統化の循環〉と呼ぶ.この問題を打破するためには,振動に関する審議会への公衆衛生学者の参与,制度運用の中での定期的な疫学的調査の実施等,幅広い受苦情報を意志決定過程に取り込む必要があると考える.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors discuss the effect of gender on the performance of women in the field of health care, and propose an approach to deal with the problem of gender discrimination in health care.
Abstract: ジンメルには,「女性文化」「男女両性の問題における相対的なものと絶対的なもの」という,性と文化の問題を扱った論文がある.ここでジンメルは,近代の文化を男性文化であるという.それは,分化と分業を基礎にして成り立つ近代の文化が,男性の分化的な本質と親和的であると考えるからである.これに対して女性は未分化で統一的な存在であるとされ,近代文化の創造には不向きだとされる.ジンメルは,こうした女性の本質を否定的に捉えるのではない.近代をもたらした男性的な生のあり方を,主観と客観の二元的な分裂と対立という近代の問題を生み出したものであるとし,これに女性的な生のあり方,統一的な生のあり方を対置する.こうしたジンメルの女性論は,女性に独自の価値を見出している一方,男女の本質的な相違を前提にしており,男性に文化,女性に自然をあてはめようとする,古くからある女性論に基づいているように見える.実際に当時の女性運動に関わったマリアンネ・ウェーバーもジンメルのこの点を批判し,女性の文化創造への関わりを積極的に推進する.本論では,ジンメルの女性論を生の哲学の観点から捉えることによって,女性的なあり方に,近代を乗り越える道を見出そうとするジンメルの,形而上学的な女性論の現代的な意義について論じるつもりである.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors proposed a method to solve the problem of "missing data" in order to improve the quality of the data collected by the data collection system of a company.
Abstract: 現代世界に国際社会が存在することは疑いない.しかし,今日の人類が直面している重要問題の多くがその枠組内での解決の可能性を超えてしまっており,それを超える新しい社会の出現を把握する新しい概念が必要とされている.それを世界社会と呼ぶことも可能であるが,「2つの世界」および「第三世界」の意義が縮小し,地球環境問題が最大の問題となってきている今,地球社会の概念こそが必要である.地球社会は,社会を共同性,階層性,システム性,および生態系内在性の相克と重層化としてとらえる視点から,共同性と階層性の相克の,宗教,国家,市場,都市による一次システム化すなわち帝国のうえに,それを超えて普及してきた二次システム化,すなわち政教分離と民主主義と科学技術にもとづく市民社会の地球的規模への拡大の過程と結果としてとらえることができる.現状では,その共同性はあまりにも弱く,その階層性はあまりにも険しくみえるが,それはそのシステム化があまりに不十分であり,そういう状態のまま地球環境の危機と人口の不均等増加という生態系内在性の問題に直面しているのが,地球社会の現実である.この状況を打開するため,市民の立場からする,地球的情報化の積極的活用,「帝国」的世界システムの批判,新たな主体的意識の高揚,およびNGOsやNPOsなどによる対抗地球社会形成が行われてきている.世界社会フォーラムのような活動が,今後ますます能動的に展開されていくであろう.

Journal ArticleDOI
TL;DR: In this article, the authors describe a scenario in which a group of people are trying to find a suitable location for a fire station in order to fire up a fire truck, but the fire station is empty.
Abstract: 大量生産体制とケインズ主義的福祉国家を骨格とした戦後システムの転換の行方に形成されつつある「ポスト工業社会」における財・サービスの社会的生産システムは,どのような編成になるのであろうか.1990年代以降,「ポスト工業社会」への転換は新しい局面を迎えた.グローバルな市場化・金融化,個人化が進むとともに,営利企業とは異なる原理に立つ社会的企業や非営利組織によるサービスや財の生産の重要性が高まりつつある.日本社会も同じ変化の波に洗われている.「ポスト工業社会」への転換は,各国の政治的制度選択や歴史的経路などに依存するのであり,多様な軌道をとる余地がある.日本社会の場合,ここ十数年の間に市場化・金融化を促す新自由主義的な制度改革が政治的に選択され,従来の日本的経営・雇用慣行は変化に迫られた.こうした変化を把握するために,次の3つの視点が必要である.(1)「市場」「組織」と労働者のニーズ・志向との絡み合い,(2)個人化,(3)家事労働,非営利団体の労働やボランティア労働などからなる非雇用労働と雇用労働の組み直し.本稿は,主に(1)と(2)の視点から日本の経営・雇用慣行の変化と持続とを論じた.